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第855話

『正宗さん、くじ引きしても良いですか?』 「あぁ。 でも、こいつのくじ当たりあんのか?」 狐のキャラクターはハズレなしなんて言っているが、こいつが詐欺師なのはよく知っている。 それに加え、狸も狐も日本では化かすのが上手いと言い伝えがあるのでイメージ的にも疑ってしまう。 ビールの缶を机に置きながらくじ引きをする後ろ姿を見守る。 『ふきもどし! 可愛いですよっ』 「ほんとに当たるんだな。 …おい。 このリス、遥登ばっか見てねぇか?」 『ゲームですよ…』 三条の島の住民は、みんな三条が好きらしい。 現実でもゲーム内でも友人に囲まれている姿はおんなじだ。 田上や吉田もいつも笑っていて本当に楽しそうな顔をしていた。 そんな姿が好きなんだ。 そんな事を考えながらまたビールの缶を傾けていると、可愛らしいリスが三条の事をあだ名で呼んだ。 「おいおい、俺の恋人だぞ。 なに勝手にあだ名で呼んでんだ」 『ゲームですって…』 「はーるーじゃねぇよ。 俺の遥登だぞ」 可愛らしいあだ名だし、そのセンスは認めるがこの子だけは譲らないぞ。 俺の最愛だ。 『正宗さんが1番ですよ』 沢山の島民に囲まれ花火を見上げ、賑やかな日曜日を締めくくる。

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