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第858話
『三条、ありがとな』
「んーん、お安いご用だよ。
俺も家族以外と話せて楽しいし。
でも、他の職員の方達から教えて貰った方が良いんじゃねぇの?」
『んー、ここ人手足りねぇんだよな。
職員の中には自分のお子さんも休校で家に1人って方もいるし、こんな時だからお願いしたいって人も多いし。
ちょっと手一杯で。
それに、俺…理系だった……。
習ったからこうだって答えは分かるけど説明すんの苦手だ…』
「あー…、なんとなく分かった」
『みんなも三条の事気に入ってるみたいでよく話に出るし、また頼むな』
友人の声に賛同する声。
子供達が元気なら、それが良い。
懐いてくれているのも嬉しい。
だけど、ほんの少し緊張する。
背筋が伸びると言えば良いのだろうか。
嫌じゃない緊張感に自然も背中が真っ直ぐになる。
「うん。
俺で良ければいつでも」
頑張る友人はとても格好良い。
その手助けが出来るなら、なんだってする。
当たり前だ。
だって、友達だろ。
「あ、面白いからって先生って呼ばすのやめろよな。
」
『バレたのか。
だって面白いだろ』
悪戯っぽく笑う吉田だって、先生を目指している。
正確には先生ではないが先生としても経験を積みたいらしい。
休み時間や放課後、職員室に質問に行っていた努力が実り希望の大学に入学出来た。
そこで沢山の事を学び、こうしてボランティアで人と接し、目標に着々と近付いていく。
ずっと見てきたその小さな事の積み重ねが眩しい。
そして自分の事のように誇らしい。
「まだまだだって思い知らされる」
『謙遜だろ。
みんなの顔見えてねぇのかよ。
三条はみんなの先生だよ』
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