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第862話
翌日、次男は昼前からお菓子作りに精を出していた。
その大半は兄の腹の中に行くが、優登のストレス発散法はお菓子を作る事なのでそれで良いのだろう。
ストレスを混ぜ込んで作られたお菓子もうんと美味しい。
「今日は何作るんだ?」
「チーズケーキとゼリー」
「レアチーズ?」
三条はパックに入ったブルーベリーを見つけ嬉しそうに声を掛けた。
「うん。
兄ちゃん好きだろ」
「うん。
すげぇ好き」
「この4層のやつ作ろうと思って。
見て。
これすごくね」
下の白色から紫色が濃くなるグラデーションが美しいケーキをタブレットに映し出すと目を輝かせて力説した。
「綺麗な層を作るには凝固剤の量もそうだけど、糖度も大切なんだって。
あれかな。
なんだっけ。
浸透圧?」
「へぇ。
面白いな」
「なっ!」
その顔を見て、兄は安堵する。
良かった
大丈夫そうだ
優登には優登のストレス解消方があって、きちんと対処出来ている。
いつも散歩に誘ってくれるので今日は自分がと思ったが、そんな心配は要らなかったらしい。
いつの間にこんな大人になったんだろう。
嬉しいけれど、ほんの少し寂しくなる。
兄の顔をした三条はそれを隠して弟の頭を撫でた。
「料理は科学って本当だな。
読んでても良い?」
「うん。
俺、もう作るし良いよ」
グラム数まで覚えているのかテキパキと動き始めた弟に関心しながら続きに目を滑らせた。
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