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第864話

休校措置で短縮された夏休みも残り僅か。 とはいえ、それは優登だけの話。 三条はまだ夏休み。 それもオンライン授業なので外に出る必要すらない。 有り難い状況だとは思う。 思うが、三条も人間だ。 色々と考える事も思う事もある。 これ……やっぱり、こっち… うーん…… 涼しいリビングで、スマホを見詰める三条の眉間には別の皺が寄っていた。 こっちの方が好きそうな気がするけど… 「だぅっ! だっ、ぶっ」 「うん?」 ローテーブルとソファの間に寝転ぶ兄の腹の上に末っ子が乗り上げてきた。 ふんふんっとご機嫌で身体を揺すられ皺をほどく。 いや、ほどかされた。 どうやら遊ぼうと誘いに来たみたいだ。 「分かった。 遊ぼうか」 「へへぇ」 「なんか動画観るか? それともブロックで格好良いの作るか?」 半身を起こし脚の間に弟を座らせる。 ぷくぷくの頬を嬉しそうに伸ばしてころころと笑うのがとても愛くるしい。 スマホを机に置こうとして、少し考えた。 「綾登はどっちが良いと思う?」 「?」 さっきまで見ていたスマホ画面を見せ問うが、兄を見上げる目はきょとんとしていて言葉の意味までは伝わっていないらしい。 ましてや、見た事もないソレを見せられても直感や自分の好みでしか反応出来ないのも解っている。 伸びた前髪を耳にかけるように頭を撫で笑った。 「なんでもないよ。 遊ぼうか」

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