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第866話
欠伸を噛み殺す事なく1つする。
靴を脱ぎ、うがい手洗いを済ませてすぐにノートパソコンを手に取った。
部屋に帰ってきたら教えてくれと連絡が来たのは昨夜の就寝前の事。
日付けが変わってすぐにおめでとうと祝福を受けたのに、また顔を見られるなんて良い日だ。
早速ビデオ通話を繋げる。
『お帰りなさい』
「ただいま」
自分の部屋と恋人の部屋を繋がると、にこにこと笑う三条が映し出された。
この顔を見られる事が1番のプレゼントだ。
今日も健康でいてくれ本当に嬉しい。
『正宗さん、誕生日おめでとうございます』
「何回言ってくれんだ。
ありがとう。
遥登の顔、何度も見れて嬉しいよ」
端からみればローテーブルの上の画面のカメラに笑顔を向けているだけだが、長岡はそこに三条がいる様に錯覚をする。
それだけ三条がいる事が“当たり前”だった。
自分が思っている以上に恋人の存在は大きくて深いものだったんだ。
帰宅して真っ先に、腰を下ろすより先に、通話をする位には恋い焦がれている。
恥ずかしいが、年下の恋人はそんな自分すら受け入れてくれるだろう。
座ったままジャケットをソファの背凭れに投げ、ネクタイも外した。
シャツの裾も出してだらりとする。
ソファの足元に寄りかかり漸く楽になった。
靴下を脱ぎながら話を聴いていると、三条はふと笑みを溢す。
『なんかえっちぃですね』
「お、大学生の精力はすげぇな」
『違いますよ…っ。
やらしい意味ではないです。
なんか、正宗さんの生活を覗き見しているみたいで…って意味です』
「見るか?
見られて困る事なんかなんもねぇぞ。
風呂もトイレも覗けよ」
にやにやと口元を緩めると三条はふぃ…と視線を逸らしてしまった。
これだから構うのをやめられない。
あんな激しく性を貪る恋人のこんな初な反応、興奮しない方が嘘だろ。
口元を隠しちらりと此方を見てくる姿はカメラ越しでなければ押し倒していた。
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