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第867話
漸く冷房も効いてきて涼しくなってきた。
かいた汗がひいていく。
そのせいか、かいた汗で湿った肌着が気持ち悪い。
いい加減着替えなければ。
だが、先に飲み物が欲しい。
喉というよりも口が渇く。
「ちょっと飲みもん取ってくる」
『はい。
俺もカーテンひいてきます』
シャッとカーテンレールの音を聴きながらポットから麦茶を注ぐ。
そうだ。
こんな時間が好きなんだ。
穏やかに過ぎていく時間が。
恋人と過ごす大切な時間が。
その時間の大切さを教えてくれた三条は隣にはいないが、こうして同じ時間を共有出来る。
戻ってくるなり三条はくりくりした目に好奇心を浮かべにっこりと笑った。
『正宗さん、空見てください。
月がオムライスみたいですよ』
朝から閉めっぱなしのカーテンを少し開けると空にぽっかりと浮かぶのは、確かにオムライスだ。
空の美しさを教えてくれたのも三条。
飯の美味さを教えてくれたのも、選んだ道に自信をくれたのも。
この恋人がいてくれなければ、そんな大切な事に気付けずに生きていただろう。
『綺麗ですね』
「あぁ、遥登一緒だともっと綺麗だな」
自然と上がる口端をそのままにカメラの前に戻った長岡を迎えてくれる最愛はあの月より美しい。
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