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第868話

「なー、我が儘言っても良いか」 『はい。 俺に出来る事なら』 誕生日だからか会えない分なにかしたいらしい三条は目をキラキラさせながら頷いた。 嬉しそうなその顔は犬そっりだ。 にこにこし感情を尻尾で伝えてくる愛くるしい犬。 長岡は猫派だが、この顔を見るたびに犬も良いなと思うようになった。 だって、この顔だぞ。 たまんねぇだろ。 20歳になってもこんな屈託なく笑うんだから甘やかしてしまうのはしかたがない。 最早、長岡の趣味だ。 祖父母が孫を可愛がるのと大差ない。 「ちょっとだけやらしい事してぇ」 くりくりした目が驚き更に大きくなる。 こういう初な反応が一々可愛い。 いや、スイッチが入ってノリノリなのも可愛いが。 あれはあれですごく良い。 この顔見たさっつったら、どんな顔すんだろ 怒られてぇ… この反応が見れただけで十分だ。 そう言おうとした筈だった。 開いた口が音を発するのを三条は遮った。 『え…と、……あの、…………風呂、済ませて…きます』 「マジかよ」 思ってもみなかった反応に、言った長岡の方が驚いた。 また処理だけで過ごしているのだろうか。 ストレスでも溜まっているのだろうか。 帰宅し動かなくなった頭が急に回りだす。 『俺も…したいですから。 ……でも、風呂は…まだ弟で…………もう少し、あとで、ですけど…良いですか…?』 こんな時、頷かない奴はいないだろ。

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