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第885話

手洗いを済ませ、その足で台所へと向かった。 冷蔵庫から取り出した冷たい麦茶をマグに並々と注ぐと溢してしまわない様にゆっくりと階段を上がっていく。 「お待たせしました」 『しっかり洗ってきたか』 「はい。 濡れタオルも持ってきたのでばっちりです」 腹も水を掛けさっと流したが気になってしまい折角長岡と話せているのに席を外すのも勿体ないので水で濡らしたタオルを作ってきた。 冷房の効いた部屋で肌を拭えば表面温度を下げてくれるしテレホンセックスで熱くなった体を少しは涼しくしてくれる筈だ。 「あの、…楽しかったですか?」 『あぁ。 最高の誕生日だよ』 「良かったです」 テレホンセックスとは言うが、後半は好き勝手に弄ってしまっていたので少し不安だった。 『つくづく祝日生まれの遥登が羨ましいよ。 時間気にしないでセックスしてぇな』 「…っ」 『ははっ、顔真っ赤』 「正宗さんがからかうから…」 『別にからかってねぇよ。 本気でそう思ってる』 しっかりとした芯のある声。 嘘じゃないんだと分かる。 本当はからかわれていたって良い。 恋人の楽しそうな声が好きだから。 笑った顔がとても愛おしいから。 好きになった人は担任で同性で、どうしようもなく自分に甘い人だった。 でもそれが良い。 それが“長岡”なら、それが良い。 そう思うのは惚れたなんとかってやつなんだろな。 「来年こそは、オムライス一緒に食べましょうね。 お子様ランチみたいにからあげとかも付けちゃいます」 『そりゃ今から楽しみだ』

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