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第888話
帰宅後すぐにシャワーを浴び、着替える事が出来る様に洋服とタオルを洗面所に用意し、1番近い裏口から家を出る。
日が沈んだと言うのに、まだムシムシした暑い空気が肌を舐めるがそんなの小さな事だ。
長岡に会えるんだから。
「?」
なんだろ……
猫だ
道路を横切る野良猫の目が遠くで光った。
気を付けてね、バイバイと手を降ったが無視されてしまった。
そこが猫らしくて良い。
猫は自由で気高くそして可愛い。
事故にだけは気を付けて欲しいと思うも、猫の姿はもうなかった。
サンダルが地面を蹴って先を急ぐ。
本人には自覚はないのだろうが、身体は正直だ。
寂れた商店街を進み、神社脇の公衆電話がゾクッとする程不気味な雰囲気を醸し出しているその横を通り過ぎた。
神社には既に人影がある。
そのすらりとしたシルエットだけで誰か解る。
「正宗さん」
「お、こんばんは」
「こんばんは」
ほんの僅かな距離なのにもう前髪が額に張り付き、汗が背中を伝う。
「汗だくじゃねぇか。
なんか飲み物買って車行こうぜ」
「あ、待ってください」
「うん?」
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