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第892話

「それにしても、リュック持ってきてくれてちょうど良かった。 それ、やるよ」 それ、と繋がれたのとは反対の手で長岡が指差したのは紙袋。 こういう時の勘はよく当たるもので、なんだか“そういう”類いな気がする。 「あの…一応、確認なんですが、いやらしい物では…」 「よく分かったな。 さっき煽ってくれたろ。 恋人を煽るとどうなるか先生が教えてやるよ」 繋がれた指が先程より強く握られ一際胸が跳ねた。 さっきのは本当に身体の薄さが気になっただけだ。 やましい意味はなかった。 ………ちょっとだけムラっとはしたが、大学生の精力じゃそういう事だってある筈だ。 「身体あんなマジマジと見てくんだから、俺だってたまんねぇよ」 「だって……なんか、身体が薄くなってる気がして」 「遥登が言うか。 指、細くなってんぞ」 結局、どちらもお互いを心配していた。 会えないからこそ気になってしまう。 そんな子供じゃないと分かっていても、かけがえのない、それこそ替えの効かない存在だからこその思いだ。 「心配してくれてありがとな。 それに、やるっつったろ。 テレセクん時足りなそうだし」 「それは…」 「バイブと携帯ローションな。 使ったら洗って、使う前は消毒な」 「あ、…はい」 「見せてな」 「………」 こくんと揺れた頭に長岡は喉の奥で笑った。 「早くセックスしてぇな?」 「…………」 また揺れる髪に長岡の笑みは一層深くなる。 「……キス、も」 「ん」

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