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第897話
「綾登、この赤ちゃん綾登だよ」
「綾登は今も赤ちゃんだけどな」
「ふふ、可愛いね」
タブレットの中の写真を整理する母親は必要な物をプリントし、アルバムを作って祖父母に送る準備をしていた。
気軽に孫と会えなくなり日々の成長を間近で見る事が出来なくなった祖父母にとってこのアルバムがどんな意味を持つのか、三男本人はまったく知らずに写真の中の兄達を指さしてご満悦だ。
なにも知らずとも元気で居てくれれらそれが1番。
「あ!
うー!」
「うん、俺だな」
「ぶ!」
「それは俺な」
写真の中の兄を指差し、本人を指す。
答え合わせをするように兄達が微笑めば手を叩いて喜ぶ。
春から見てもぐんっと成長した綾登とは違い、兄達の表面の成長は穏やかだ。
優登は背丈が伸び大人びてきた。
三条も大人っぽくはなったが、それも春と比べたとしても分からない程度だ。
これはみっちゃん!と母親を指さして、不在の父親は頭を撫でている。
「とー」
「そう。
父さん」
元々は長男が幼い頃、メールで写真のやり取りをしていたのだがそれだと見返すのが手間になってしまうとはじめた事。
あの頃に大きな画面のスマホがあれば作らなかっただろう物が20年経っても続けられていた。
両親共にマメな性格なのでこうして続くのだろう。
祖父母の家に行くとそれらが並べられていてなんだか恥ずかしい。
「こっ!
こっ!」
「シシも撮るのか?
じゃあ、一緒に撮ろうな。
格好良い顔して。
いくぞー」
お気に入りのポーズをして写真を撮ってもらうと今度は兄とも撮りたいと抱き付いてきた。
あぁ、どの瞬間も可愛い。
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