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第899話

日中の反動か夜中にふと寂しくなってしまう事がある。 長岡に会いたい。 あの腕の中で眠りたい。 恋しい。 そんな事ばかりを考えてしまう。 早く週末にならないかな 週末になれば会える。 いや、正確には今の感染者数が保たれればだ。 それに、仕事に支障をきたしたくないので平日まで会いたいなんて我が儘は言いたくない。 ごろんと身体の向きを変え壁を見上げる。 その季節を過ぎても、ハンガーにぶら下がったままの長岡の私物。 唯一の長岡の物を腕に抱き留めた。 もうにおいのなくなったコートを抱き締めベッドの中で丸くなる。 そうして、スマホの中の写真や動画を漁る。 眠れない時の癖。 『遥登』 『遥登。 ほら、こいって』 『あったけぇ。 さいっこう』 耳に挿したイヤホンから聴こえてくる低く落ち着く声が名前を呼ぶ。 たったそれだけが嬉しい。 嬉しいのに…。 我が儘になってはいけない。 人を困らせてはいけない。 その筈なのに。 『遥登、好きだ』 「俺も、好きです」 ぽつりと呟いた言葉は暗がりに溶ける。 早く週末になれ。 早く会いたい。 正宗さん、大好きです

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