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第909話
「はじめまして。
三条遥登です。
みんなと会えて嬉しいです。
たまにしか来れませんが、よろしくお願いします」
「三条先生は、学校の先生になりたくて勉強してるから教えるの上手だよ。
俺も教えてもらったし」
トントン拍子に話は進み、とりあえず今学期のボランティアとなった。
来年度は教育実習やなんやらで忙しくなりそうなのでとりあえずの話だが、それでも前進した。
出来る事をする。
役に立てる事がある。
そんな当たり前の事が今は嬉しい。
「次はいつ来てくれる?」
「勉強得意なの?」
「吉田くん好き?」
「彼女いる?」
「えー…と、次は来週来ます。
勉強は得意って言うより、分からない事が分かっていくのが楽しいです。
吉田は好きです。
彼女は……秘密です」
持ち前の人当たりの良さを発揮し既に子供達に懐かれている。
吉田は子供の為に出来る事をしたい、と今の道を決めた。
子供の為。
子供だけの為の方が正しいらしい。
その為に逆算して高校を決めたと話には聞いていたが、本当にそれを実現させようとしているのだから尊敬する。
「あのね、吉田くんは彼女いないだって」
「俺はいーの。
ほら、三条先生の事、他の先生に紹介してくるから待っててな」
「先に教室作ろうよ」
「そうだよっ。
さっきまで掃除してたから綺麗だよ」
「綺麗になったよな。
翔太、分かったから押すなよ。
三条押してやって」
「え、俺?」
吉田も子供に背中を押され、早く教室を作ろうと急かされた。
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