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第911話
ヒントを出して戻ってくると、吉田が小さく笑いを堪えていた。
「今の、長岡っぽかった」
「え、マジで」
「ガチで」
恥ずかしいような嬉しいような。
いや、目標にしているので嬉しいのだが。
でもやっぱり照れがある。
あんな風に古典の、作品のロマンを伝えられる様になりたいなんて高望みではないかと思う時もある。
それでも、長岡に教えて貰ったそれらはとても美しい。
美しくて儚くて、気高い。
その美しい物を誰かに知って欲しいと思うのは本心だ。
小さな思いを大切に育ててきた。
長岡や沢山の人と一緒に。
やっと芽吹いた小さな芽。
それを、その目標に似てると言われたのだから嬉しくない筈がない。
「遥登先生、ここも分かんない」
「あ、はいっ。
今行きます」
「ほら、それ」
「遥登先生、私もー」
子供達の席へと向かう背中に懐かしいなと聞こえた。
それがまた背中を押す。
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