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第912話
『ボランティアお疲れ様。
どうだった』
「吉田もそうですけど、みんなに直接会えて嬉しかったです。
あと、教えるって難しいですね…」
『ははっ。
だろ。
俺も毎日勉強だ』
綺麗に整えられた眉を下げて笑う長岡は教え方がとにかく上手い。
生徒によって言葉や教え方を変え教えてくれるそれらは、すーっと頭に入ってくる。
一言で言えば、憧れだ。
だが、長岡が努力して手に入れたそれをただ羨むだけはしたくない。
努力して自分も手に入れてみたい。
みっともなく泥だらけになろうとも。
きっと手にしたそれは、うんと綺麗だから。
「でも、色んな事を考えるきっかけになりました。
どうやったら楽しく覚えてくれるんだろうとか、苦手意識が薄くなってくれるんだろって考えて、教え方を意識しました。
今までは教えて貰う側で特別意識した事なかったかもって反省です」
うんうんと聴いてくれるので考える事もなく素直に口から言葉が出ていく。
沢山知りたい事が増えた。
沢山勉強したい事が増えた。
胸がドキドキと弾むのは子供達が教えてくれた事。
これも、とても大切な芽だ。
「あ、それと」
『それと?』
「吉田に、長岡先生に似てるって言われました」
長岡は一瞬驚いたような顔をして、瞬きの間に穏やかに破顔させる。
思わず此方まで笑ってしまうその顔が大好きだ。
『そりゃ光栄だ』
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