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第924話
当てもなくフラフラと夜に溶けながらデートを楽しむ。
部屋でのデートも良いが、散歩を楽しみながらのデートもとても良い。
見慣れた景色がまた一層美しく見える。
「帰ったら手洗いうがいしたか?」
「はい。
しました」
「風呂は?」
「入りました。
あ、帰ったらまた入ります」
外出をしたままの格好で布団に入るのは抵抗がある。
新型ウイルスが流行してから潔癖よりになっていくのを感じている。
外に出て目が痒くても擦れなかったり、手指の消毒を繰り返していく内にどんどん目に見えない物が恐ろしくなってきた。
指を舐めたかもしれないとお札に触れる事に抵抗を持ち始めたのはアルコール消毒で指がカサ付く事が増えたからだ。
なんだか嫌な副産物だなと思う。
自分達の様にある程度歳を重ねていてもそうなのだから、物心ついた頃からこんな環境が整っていればこれから大きくなる世代の子供達は潔癖だと言われるのだろう。
誰が悪い訳でもないのにだ。
末弟が心ない言葉に傷付かない事を願う事しか出来ない。
「良い子だ。
オナニーは?」
「え?」
「勃ちそうだったろ。
抜いたか?」
「……っ!」
さっきまでの無垢な顔はどこへいったのか、顔を真っ赤にして目を大きくした三条は目を泳がせ始める。
「…………する時は、連絡してるじゃないですか」
「ローター使う時だけだろ?
まさか、あんなたまにしか抜いてないのか?
悟り開いてんのかよ」
実家暮らしの苦労が数年の長岡とは違い、現在進行形の三条。
中々処理するのも難しい。
音とか、においとか、後片付けとか。
玩具を使うのは気持ちが良いが、慣れて普通の自慰では物足りなくなるのも避けたい。
そうでなくとも長岡とのセックスに慣れた身体はオナニー程度の刺激では到底満足出来ないのだから。
「じゃあ、部屋来た時にしていくか。
俺しかいねぇし、気兼ねなくしてくれてかわまねぇよ」
冗談めかして言われた言葉に生唾を飲み込んでしまう。
だって、きっと長岡は見てと言えば見てくれるし罵ってと言えば言葉で責めてくれる。
そんなの興奮するに決まっている。
「……正宗さんも、するなら…………する、かも…です」
「ははっ。
良いねぇ」
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