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第928話

「あ、長岡先生、お疲れ様です。 印刷に行きますけど何かありますか」 「いえ、今は大丈夫です。 ありがとうございます」 「じゃあ、行ってきます。 あ、今、準備室誰も居ないので留守番お願いしますね」 授業を終え、準備室のドアを開けた所で隣席の柏崎と出会した。 印刷室に行くという彼の手にはクラス配布用のプリント。 3年間、クラスを受け持って身に染みたがとにかく忙しい。 授業だけでなく、クラス事まで率先しなければならない。 正直な話、古典から離れられなかっただけの長岡はクラスを受け持つ事より好きな古典作品に触れていられる授業の方が好きだった。 それを変えてくれたのはA組なのだが、A組を送り出しまたクラス担任は暫くしたくないと思うようになってしまった。 教科書にノート、プリントを挟んだファイル、恋人からプレゼントして貰ったペンケースを机に起き、座りたいのを堪えて手洗いをする。 チョークの汚れもそうだが、授業終わりに教卓にのせられたアクリル板をアルコール消毒で拭いたのでとにかく手洗いがしたくて堪らない。 他の教師はしないそれを長岡がするのは、単に自分がそうされたら嬉しいからだ。 ただそれだけ。 水が冷たくなってきたな あー、毛布も洗っとかねぇと 綺麗を強調したハンドソープを手に刷り込みしっかりと手を洗う。 恋人の癖がすっかり移った長岡にとって手間でもなんでもない。 それに、こんな事で予防が出来るのであれば率先してする。 ポケットを濡らしながらハンカチを引っ張りだした。 あ、遥登が使えるようにブランケットも洗うか 冷えて風邪でもひかせてしまったらこのご時世色々と心配だ。 漸く椅子に腰掛け一休みといきたい所だが、そうもいかない。 すぐにノートパソコンを立ち上げ次の仕事に取り掛かる。

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