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第942話

長岡の部屋を訪れて既に3回目の手洗いだ。 水で洗っているとお湯を使えと切り替えられた。 有り難くあたたかな湯で石鹸を洗い流す。 「で、どんな動画観てたんだ」 そういえば、先刻教えると言った様な気がする。 別に18歳を過ぎ、高校も卒業しているので例えアダルトビデオだとしても観てもなんの問題もないのだが、なんとなく言いにくい。 これまで生きてきた20とアダルトビデオを観られる様になったこの1年と少しを比べたら、そりゃ観てはいけない期間の方がながかったので慣れていないと言えばそうなのかもしれない。 が、言った手前、やっぱり言えません、なんてのは避けたい。 俺も男だ。 おずおずと口を開いた。 「……………ハウツー動画……」 「ハウツー動画?」 手コキは自身のソレである程度の練習が出来るが、フェラチオは余程の軟体でも無理だ。 だからと言って食べ物で練習するのも出来ない。 ハウツー動画を観て、どう舌を這わせ、どう手を動かせばより気持ち良くなって貰えるか勉強した。 会陰は外側から前立腺を刺激出来るだの、口で奉仕しながらアナルに指を入れると気持ち良いだの、長岡にされてきた数々の愛撫を思い出しそれはそれで大変だったが、それでも恋人に気持ち良くなって欲しいというただ1つの願いの為に羞恥心を堪えてきた。 その成果に長岡は2度も吐精してくれた訳だ。 まだまだ拙いとは自覚しているが、良い結果が出てくれるとちょっと嬉しい。 「AVじゃなくてか?」 「……一応、アダルトのですけど…」 「変なとこも真面目だよな」 前髪をくしゃりを撫でる長岡に言葉を続ける。 「だって、正宗さん……いつも俺は良いからって。 正宗さんだって出さなきゃしんどいでしょ。 恋人は平等なのに、不公平です。 そんなの俺は嫌です」 この前のカーセックス擬きだって自分だけが射精して、テレホンセックスは長岡も射精してはいるがあれはほぼオナニーだ。 いつも自分ばかりが気を使われているのも気にしていた三条は、長岡と通話を切った後や眠れない夜に何度も繰り返しハウツー動画を観て頭の中で練習した。 イメージトレーニングはこれからも必要になる事なので、その練習も兼ねていると思えば少しは、少しは恥ずかしさも紛れた気がする。 やっぱり、気がするだけかも…知れない……。 すごく、すごく恥ずかしかった。

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