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第943話
部屋を訪れて既に3回目の手洗いだ。
言わなきゃ水で手洗いをする三条にお湯を出してやる。
先程はまだしも、今は冷たく寒いだろう。
水切れは水の方が良いが、しっかりと濯げばお湯でも同じだ。
「で、どんな動画観てたんだ」
別に18歳を過ぎ、高校も卒業しているので例えアダルトビデオだとしても観たってなんの問題もない。
三条も男だ。
抜く時のおかずにするかも知れない。
いや、寧ろどんな物を観ているのか、どんな作品で抜いているのか興味がある。
案外、師物なんて観てたりしてな。
………うわ、それはなんか腹立つな
三条は間を開けてから、おずおずと口を開いた。
「……………ハウツー動画……」
「ハウツー動画?」
ハウツー動画って、あのハウツー動画?
以前よりイイトコロを的確に狙えるようになったのは指導物があったからなのか。
アダルトビデオを観て勉強したのかと思ったのだがそうではなくて、少し安堵した。
「AVじゃなくてか?」
「……一応、アダルトのですけど…」
「変なとこも真面目だよな」
前髪をくしゃりを撫でゆっくりと息を吐いた。
「だって、正宗さん……いつも俺は良いからって。
正宗さんだって出さなきゃしんどいでしょ。
恋人は平等なのに、不公平です。
そんなの俺は嫌です」
そうだ。
三条はそういう子だった。
優しくて、人の事をきちんと考えられる子。
そんな事、長岡がしたくてしていると言うのに。
実家暮らしで満足な自慰が出来ないだろうと、実家の窮屈さも知っている長岡が出来る事だと思ってした事をそんな風に考えてくれていたなんて。
どうやったらこんな良い子が育つんだろうな。
真っ直ぐで強くて、ブレない芯がある。
三条に似合った気高い性格だ。
そんな子を強姦した後悔は悔やみきれない。
例え、それがあっての今だとしても、もっと大切にすれば良かったと思ってしまうのはやめられない。
込み上げるこの気持ちが人を愛おしいと思う感情だと知れたのは、健気な恋人のお陰だ。
背後から腕を回し真っ直ぐな髪に頬をくっ付けた。
「ありがとな、遥登」
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