951 / 1502

第951話

わかめスープがあった……はず… ねぇな 全部食ったか…? 釣り戸棚を漁るが見当たらない。 どうやら最後の1つがあったと思ったが思っただけだったらしい。 揃いのマグカップに顆粒鶏ガラスープと冷凍葱、乾燥わかめを適当に入れ、沸いた湯を注ぐ。 学生時代から簡単に汁物が欲しい時によく作る即席のスープ。 胡麻油や春雨を入れても美味いが今日は濃いソース味と食べるので葱とわかめで十分だ。 「なぁ、遥登。 フライパンから食っても良いか」 『はい。 俺の事は気にしないでください』 長岡は4年付き合っていていても礼儀を忘れてない。 三条の前ではなるべく食事は皿に移していたが洗い物も増えるし1人となるとめんどくさい。 それよりさっと食って三条と話したりゲームをしていたいと申し出れば、いつものにこにこした顔で頷いてくれた。 『1人だと俺もしますよ。 インスタントラーメン茹でてそのまま小鍋で食べるのとか』 「あー、その食い方美味いよな でも、覚めにくいし熱いだろ」 『中々冷めません…。 でも、洗い物するの面倒ですし』 「ははっ、分かる」 カメラ揺れるぞと声をかけローテーブルにフライパンと共に着席した。 フライパンから直接食っても、台所で立ち食いは流石に礼儀が無さすぎる。 両手を会わせてすっかり癖になった挨拶をしてから、ふーっと息を吹きかけずずっと啜った。 『美味しいですか?』 「遥登と一緒だと美味い」 カメラ越しでもキュンとする笑顔に、三条ははにかんだ。 元々上がっている口角は緩くなり頬の筋肉が緩む。 照れたように笑い、嬉しそうな目をする。 それが長岡にとってどれ程心に栄養をくれるか。 疲弊しすり減った心が元気になっていく。 先日は甘えたので今度は三条をでろでろに甘やかしたい。

ともだちにシェアしよう!