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第952話

飯を食い終え、今度はゲーム。 フライパンも箸も流しに措きっぱなし。 休日の子供の様な生活だがたまには良いだろう。 現実なら10月に海なんて入れないがゲーム内では出来てしまう。 寒そうだが。 「はー、またこのリスは遥登ガン見してんぞ」 『ゲームじゃないですか…』 「あ、でな。 中々、集まんねぇんだよ」 『スピード早いのですよね。 角に追い詰めるまでが大変です』 折角のビデオ通話だが、元無人島を開拓─もとい、狸への借金返済─すべく今日も金を稼ぐ。 図鑑を埋めたいのも勿論あるが、とにかく借金があるのが気持ち悪い。 実生活でも奨学金返済をしているのだからせめてゲーム内では自由になりたい。 地下を作って踏み倒す人も居るらしいが、流石にゲームでもそれはしたくない。 コツコツ返済するしかないのだろう。 机に肘を付き、ダラけた姿勢で海を泳ぐ。 相変わらず恋人のキャラクターは色気のない水着を着ている。 『ふふ。 正宗さん、うちの弟と同じポーズになってます』 「これやるよなぁ…」 今度はソファの足元に寄りかかり小さくなる。 「これは遥登の真似な」 『え、正宗さんの前でもしてますか?』 「この前してた。 ベットの上でゲームしてた時。 素なんて見れんの珍しいから言わなかったけど、可愛かった」 就寝時も丸くなり寝るが、ゲーム中も縮こまるとはと思っていなかった。 というか、よく今まで素にらなかったもんだと感心した。 『すみません…』 「なに謝るんだよ。 今度は俺の目の前でもそうしてくれ」 『でも…』 「俺が嬉しいんだよ。 家族みてぇだろ」 『っ!』 頬を赤らめ、きゅっと上がった口元が緩んでいる。 その顔が大好きな長岡は満足そうに笑う。

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