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第953話
「にーちゃんっ、散歩行こう」
「ん。
行こう」
「あ、今、忙しかった?」
「あぁ、これ?
大丈夫だよ。
ちょっと纏めてただけ」
長岡から教えてもらった箇所を調べ纏めていた手を止めて伸びをする。
どれ程の時間そうしていたのか、節々からパキパキと空気の潰れる音がした。
「本当に?」
「本当に。
それに、大丈夫じゃなくても気分転換になって良いだろ。
気にすんなよ」
ノートをそのまま帽子と上着、鞄を持つと、弟はじっとこちらを見詰めてくる。
「それ、お洒落かよ」
「あ、……いや、でも…それはそれで失礼だろ…。
着替えるからちょっと待ってて」
確かにお洒落ではない。
ではないが、着心地だけは良い。
最近のビックシルエットの流行りのお陰で袖が足りないという事も少なくなった。
お陰でクローゼットが少し満たされた。
とはいえ、気軽に外へと出掛けられる状況でもないのだが。
服が増えても着ていく場所は週末の外デート位。
十分と言えば十分か。
今し方着ていた服から適当な服に腕着替え、いつもの鞄ではなくこちらはちょっと良いものに財布を詰める。
腕時計を手に取り、弟の優しさに感謝した。
着けて出掛けられんの嬉しいよな
「優登、お待たせ。
お洒落?」
「まぁまぁ」
「辛口だな」
「嘘。
すげぇ似合ってる」
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