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第954話
季節はあっという間に過ぎていく。
ついこの間までカリカリくんみたいな氷菓子を好んで手に取っていたのに今はアイスクリームが気分だ。
風が冷たくなり、町の木々が化粧をし、そして足元へとおりてくる。
「今日はお菓子ってよりゼリーな気分」
「火燵ん中で冷たいの食べると更に美味いよな」
こうやっている間にも落ち葉がひらひらと落ちていく。
もう11月は目の前だ。
そうして、もうすぐ長い冬がやってくる。
厳しい冬だ。
だけど、付き合ってから5回目の冬は長岡と外デートが出来る。
2人きりの部屋デートも良いが、小指を繋いでこの古びた町を歩くこともとても心地好い。
そんな楽しみ方をしたって良いだろ。
「アイスはアイスクリームが食べたい」
「あー、アップルパイと一緒に食いたい。
また作ってくれるか」
「任せろっ。
焼きたてのそうやって食おう」
秋の風の中をコンビニに向かって散歩するのはとても楽しい。
兄と2人きりだと優登も比較的素直になれているしお互いにとって大切な時間だ。
銀杏の身が落ちていて誰かに踏まれている。
それに甘い金木犀のにおいが混ざりなんとも言えない秋のにおい。
「そうだ、今度綾登に南瓜のパイ焼こうと思ってて。
魔女の宅配便のニシンのパイみたいにして」
「絶対喜ぶだろ」
一緒の家に住んでいても話は尽きない。
学校の話、友人の話、ゲームの話。
日常生活を取り戻してきた次男には沢山の話の種がある。
それをうんうんと聞きながら、そして時々時間を聞かれながら散歩は続く。
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