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第957話

「ハロウィンの仮装で黒猫着てもらったんですけど、もう可愛くて。 蓬ちゃんにも負けない可愛さですよ」 兄弟仲が良いのは良いことだ。 まして、土日祝日は独占していたのだからこんな時位兄弟の時間を大切にして欲しいとも思う。 小指を繋いで今日もデート。 脇にオレンジ色の花が咲く土手を歩きながら楽しそうな三条の話を聴いていた。 「そりゃ可愛いな。 遥登も、なんか着れば良かったろ」 「俺は…。 三男で遊ぶのが楽しいんです」 ヒュゥっと強い風が吹くと、冷たさが混ざっている。 体温の高い恋人が恋しくほんの数センチだけ距離を詰めた。 「正宗さんはやっぱり定番の吸血鬼ですかね。 よく噛んできますし格好良いのの定番ですし」 「コスプレって事で遥登の首おおっぴらに噛んで良いのか。 最高だな」 「あ、警察官もえっちいです」 「えっちくねぇよ。 えっちぃのは遥登だろ」 暗がりな事と陰のせいか痩せたようにも見える首。 丸い頭がのるには頼りなさそうにも見える。 痩せたのではないか、しっかりと休めているか、心配事だって沢山あるよな。 そっと絡ませた指に力を入れて引き寄せると三条はふわりと笑った。 「……俺は、えっちじゃないです。 黒猫も似合いますよ」 「ネコは遥登だろ」 「……そういう意味では…」 今度は恥ずかしそうに視線を逸らされた。 こういうところが良いんだ。 素朴で摩れていなくて。 遥登だなって分かるすべてが愛おしい。 簡単に会えなくなってからより愛おしさが増した。 そして、恋しくなった。 「あ、また浴衣着せてぇな」 「それはコスプレになるんですか」 「ほら、普段着ねぇし」 「じゃあ、俺も正宗さんに似合う浴衣選びたいです」 「今のが収まったら温泉も花火も行こうな」 約束だと小指を揺らして2人で笑った。

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