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第959話

「こんにちは」 呼び鈴を押すと出迎えてくれる大好きな人の笑顔にきゅんっとした。 ボランティア帰りの秘密の逢瀬。 部屋デート。 今日もシンプルなスウェットを着こなしている。 そのシンプルさがより一層顔立ちの整い具合を強調する。 それに、テストも採点も終わり顔色が良い。 「こんにちは。 お邪魔します」 「どうぞ。 ボランティアお疲れ様」 「楽しかったです」 そりゃ最高だとスニーカーを脱ぐ背中にあたたかな言葉がかけられる。 なにか役に立ちたい。 そんな自分の思いだけで動いていた筈なのに長岡に褒められると嬉しい。 「……あの、自分からご褒美と言うのは烏滸がましいのですが…」 「なにして欲しい?」 「……え、と………背中からで良いので、抱き付きたいです…」 こいよ、と背中を向けられ素直に甘えた。 「勉強にボランティアに頑張ってて偉いな。 甘えてきたのも偉い」 「それは甘やかし過ぎですよ…」 背中に頬をくっ付けるとしっかりとした心音が聴こえてくる。 においも、体温も長岡のものだ。 長岡だと分かるそれが大好きだ。 「甘やかしてねぇよ。 本当に偉いな。 背中で良いなら沢山くっ付いてろ」 「でも、手洗いとうがいもしたいです」 「ふはっ、かわんねぇな」

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