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第968話
更にデートは続く。
デートはデートだが、羞恥プレイを兼ねるなんて一緒にコーヒーを飲んでいる時は思いもしなかった。
三条の自宅がある方へ戻るにはどうしても住宅街を抜けなければならなかった。
軒を並べる新築の家は若い世帯が暮らしているらしくリビングであろう大きな窓を覆うカーテンの隙間から光が溢れている。
外には三輪車や補助輪の付いた自転車が自動車の脇に並んでいて、異常な事をしているのだとより意識してしまい心臓がドキンドキンと痛む。
「引き返すか?」
喉がひくりとおかしな動きをした。
それでも通らなければ駐車場へは行けない。
「絶対に、手…離さないでください…」
道路に面しているのは数件だ。
数件だけだ。
繋いだ小指をぎゅっと締めてゆっくりと1歩踏み出した。
長岡と繋いでいるのは小指のみだ。
それでも、とても心強い。
そういえば、こんな映画があった。
手を繋ぎ橋を渡る。
人間だとバレない様に渡りきるまで息を止めて。
最終的には失敗していたが。
まさにその人間の様に頼れるのは相手だけとばかりだ。
その子も頼れるのは隣を歩く人だけで、そしてきっと心強かっただろう。
そんな事を考えていると遠くでバイクの走行音が聞こえた。
ドキッとし息を止める。
「曲がったな。
こっち来なくて良かった」
頷く三条は緊張と恐怖以外にも僅かに他の感情が芽生えていた。
こんな事で興奮するなんてはしたない。
なんて淫らだ。
それでも、身体は正直だ。
「俺……変態、かもです」
「大丈夫だ。
俺もだ」
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