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第974話
「なんか玩具も持ってくれば良かったな」
「……正宗さんが、いるだけで充分です」
「勃つような事言うなよ。
このまま連れて帰りたくなるだろ」
それでも良いのだが、そうもいかないのは重々承知している。
なにかあれば“大人”で“公務員”の長岡が責任を被るんだ。
そんな事はさせられない。
「オナんの時々過ぎんだよ。
吐き出さねぇとストレスも溜まるだろ」
「え…」
玩具を貰ってもあまり使えていない。
それどころか、性処理も頻度が落ちた。
いつも自宅に家族の誰かがいるというのも大きいが、1番は長岡とセックスが出来ないから。
どうしてもアナルが疼いてしまう。
だから、控えていたのだが…。
「それで…?」
「あ、違ぇって。
俺がしたかったんだよ。
すっげぇ楽しかった」
それも半分はそうなのだろう。
だけど、気を使ってくれたんだ。
長岡は優しいから自分が気を使うような事は絶対に言わない。
自分がしたかったと言う。
毎回言われていれば解る。
首輪の巻かれた手を伸ばし、長岡の手をとる。
冷たくて大きくて大好きな手。
その小指だろうも今は触れられる喜びが大きい。
「ありがとうございます」
「パンツ脱がされといて、ありがとうか。
やっぱマゾは違ぇな」
そう言って笑う恋人の顔はどこか穏やかだった。
サディスティックさもありながら本当に安堵した様な表情を見せるから、このまま連れ去られても良いと思う。
だけど、それを口に出さないのは長岡が守ってくれていると解っているからだ。
守ってくれている大切な家族を、友人達、恋人を自分も守りたい。
悔しいけれど今はぐっと耐えるしかなかった。
だから、少しだけ。
小指をぎゅっと握りながら心の底からの言葉を伝える。
「 」
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