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第979話
「お待たせ。
ちょっとお茶飲ませてくれ」
『はい』
再度アプリを繋げた2人の表情は対照的だ。
長岡は至極楽しそうで口元が緩んでいる。
反対に三条は、眉を下げそわそわと落ち着かなそうな顔で何か言葉を発しようとしたりそれを飲み込んだりを繰り返す。
ごくごくと飲み物を嚥下するごとに上下する喉仏を存分に晒し、三条はごくっと生唾を飲み込んだ。
完全に空気に飲まれようとしている。
「はー、すっきりした。
で、風呂も済んだし寝る前に身体もすっきりしてぇなぁ」
『パンツ、借りて…ですか?』
「あぁ。
借りたんだからな」
賢い三条ならこの場面を切り抜ける事も出来よう。
だが、それをしないのは──いや、出来ないのは、先程自分ばかりが快感を得たから。
大方、罪悪感でも感じているのだろう。
そんなの気にする必要はないのにだ。
手を出されたのは自分の方だと言うのに。
だが、それに溶け込み甘える自分も自分。
「見ててくれるだけで良いから」
机の上に軽く畳んでおいた下着を見ながらスウェットをズラす。
まずは下着の上から刺激していく。
三条ではないが、長岡もあまり自慰をしなくなった。
会えていた時はセックスで気持ち良く精を出していたのもある。
あんなしあわせで気持ちの良い行為を何度も繰り返せば自慰なんてなんて物足りないものか。
現状としてもセックスなんて濃密な接触を簡単にする訳にもいかず自己処理をしなければ溜まっていく一方なのだが、自分に時間を裂く位なら三条に使いたい。
人の事ばかり気にして、毒のある大人達からの言葉に心を痛め、それでも上がる口角がそれを隠してしまう恋人。
こんな良い子がそれらを被る必要はない。
家族と、友達とただただ笑っていて欲しい。
『あの……』
「ん?」
『さっき、俺ばっかり…気持ちくしてもらって、すみませんでした』
「気にすんなって言ってるだろ。
それに、俺には露出の気はないからな」
『そ、ういう意味じゃなくて…』
ほらな。
また人の事を心配してる。
自分が勝手に手をだしたのにこれだ。
本当に嫌がるって事を知らないのかと不安になる。
「俺がしたかったんだから良いんだよ。
さっきの遥登とパンツおかずにして抜くから、気にしてんなら見ててくれ」
『は、い』
これだもんな
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