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第988話
同室の職員が不在の間に換気をする。
雪が降るまでは少しでも外の空気が入るように窓を開けているが、正直寒い。
とはいえ、度重なる休校処置で生徒達ばかりを犠牲にしたくはない。
大人も同じだけ頑張らなければ可笑しな話だ。
長岡は大きく窓を開けて外の風に当たる。
日中も冷えるな
これから換気がしたくなくなりそうだ
そういう訳にもいかないけどな
生徒が授業中に窓を大きく開けたり負担を減らそうとは努めているが、何分ただの一教師に出来る事は限られている。
三条の事も心配があり頭は殆ど常に動いたまま。
「さむ…」
「あ、換気をしてまして。
柏崎先生こそどうかされたんですか」
「プリント忘れちゃいました。
換気ならみんないる時にしましょうよ。
長岡先生だけ風邪ひいちゃいますよ。
俺も仕事休みたいです」
忘れ物を取りに戻ってきたらしい隣席の教諭はあったあったとプリントを手にしてそう笑った。
おどけた様な言葉に聞こえるが決してそうではない。
「頭もすっきりしますから」
「そうですか?
でも、本当に風邪には気を付けてくださいよ。
どっちか分からなくて休んでる間に生徒達からなんで長岡先生だけ休みなんだってブーイングがおきそうですし」
じゃ、戻りますねと直ぐ様出ていった柏崎は駆けているのか、微かにきゅっとゴム底が廊下に食い込む音を響かせた。
彼は村上に似ているというか、とても気さくだ。
ずかずかと踏み込んできそうで実はとても気を配ってくれている。
明るく生徒からも話し掛けやすいタイプで男女どちらからも人気がある。
三条と出逢ってから人に恵まれたなと思う事が多々あるが、それも恋人からの影響だろう。
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