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第1000話

雪が舞っているが大好きな人との逢引きに胸が弾む。 デートも出来たり出来なかったりで、安定した恋人の供給が望めない。 しかし、感染してしまえば少なくとも2週間は会えない事が決定なので避けられるのであれば避けたいのは三条も同じ。 それに、公務員の長岡は必要以上に責められるだろう。 これに関してだけは、諦める事も大切だと奥歯を噛み締め無理矢理割り切っている。 「正宗さん、お待たせしましたっ」 大好きな主人を見付けた犬の様に自分の元へとかけてくる三条に長岡は恋人の顔を見せた。 恋人だけが見られる特別な表情。 それに今まで考えていた色々な事が吹き飛んでいった。 「こんばんは。 待ってねぇよ」 「あ、こんばんは」 律儀に頭を下げる三条の髪がサラサラと動き、それだけで“恋人だ”と頭が理解する。 部屋着であろうスウェットにラフなパンツを履いた三条はその上にアウターを羽織っただけの身軽なもの。 若く、体温の高い三条らしいと言えばらしい格好だ。 長岡は自分の首からマフラーを引き抜いた。 「遥登、少し暑いからマフラー持っててくれるか」 そう言いながら有無を言わさず首へと巻かれた。 ふわふわといいにおいがする筈なのだが、マスクのせいでそれも薄い。 悔しい……と思う気持ちが込み上げようとする。 「でも…」 「着膨れてるから暑いんだって。 それとも、子供体温で暑いか?」 その優しさに三条は顔を埋めた。 悔しい気持ちは引いていき、穏やかに心を鎮めてくれる。 「ありがとうございます」 「暑いからな。 んじゃ、デートしようか」 「はいっ」

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