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第1001話
小指を繋いで細い路地を通る。
細い道が入り組み地元の人は大きな道路に抜ける為の近道にしているが、地元民以外には難しい。
しかも、一方通行道路が多過ぎて自動車では小回りが利かないんだ。
徒歩や自転車を利用するのも地元の人達がが近道に使うのも頷ける。
「こんな所に居酒屋あんのか」
「ここ、チーズフライが美味しいです。
遊びに来る祖父と父がたまに行っててお土産に買ってきてくれてました」
長岡は夜の揚げ物はギルティな味がして更に美味いと笑うが、目が釘付けになるのは蟹と書かれた幟だ。
「蟹ですか?」
「あ、あぁ。
最近はカニカマすら食ってねぇ」
「温泉の時も蟹が一押しだって言ってましたよね」
受験のご褒美だと連れて行って貰った温泉旅館での事を思い出す。
豪華な夕餉で何が一押しだと聴き返したら、蟹だと言っていた。
かく言う自分もホタテの刺身だと言ったが。
あのホタテは本当に美味しかった。
それと、朝食のだし巻きたまご。
また行く約束は、いつ叶うだろうか。
「美味いだろ」
確かに蟹は美味しい。
そのままでも、茹ででも焼いても、クリームコロッケにしても、炒飯にしたって、たまごでとじたって美味しい。
それには激しく同意する。
そう頷くとふと思った。
そう言えば、煮魚を食べたがったりする事が多いが魚介類が好きなのだろうか。
普段簡単に調理し食える炒飯や焼きそば、うどん等の炭水化物ばかり食べている反動だと本人は言うが本当にそれだけなのか。
「ん?」
「正宗さんって、魚介類好きなんですか?」
「人並みだろ。
肉も好きだぞ。
からあげとか」
「でも、よく煮魚食べたいって言ってます」
「あー、遥登の煮た魚美味ぇよな。
なんであんな口に合うんだろうな」
「そんなにですか?」
再び歩き出した長岡の隣を歩きながら顔を覗き込むと、にっと悪戯っぽく笑った。
「そんなにですよ」
その笑顔に胸がきゅぅっとしたのは内緒だ。
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