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第1007話

『いやな、なんか別れがてぇって言うか顔みたくなってな。 別に用はねぇんだ。 ただ、繋げててくれりゃそれで良い』 いつもビデオ通話を繋げつつ各々好きな事をしてきた。 それを改めて口に出してくれるのは長岡の優しさだ。 『大丈夫か?』 「はい。 嬉しいです」 『そう言って貰えてこっちこそ嬉しいよ。 いつも通り過ごしてくれ』 「分かりました。 じゃあ、髪乾かします」 『んじゃ、俺も乾かすか』 ふふっと口の中で笑いそれぞれすべき事を片付けていく。 こんなで良いか 正宗さん、なんか言うかな まだしっかりとは乾いていないが、いつもこんなもんだ。 ひょこっと画面を覗くと大きな口を開けて欠伸をしていた。 「饅頭が丸ごと入りそうですね」 『見てたのかよ。 えっち』 「えっちじゃないですよ…」 『俺の服着ねぇのか』 「え、勿体ないじゃないですか。 折角良いにおいするのに消えちゃいますし…」 『来週また交換すれば良いだろう』 「良いんでふかっ」 あまりに嬉しくて噛んでしまった。 喉でクツクツと笑われ、かぁっと頬が熱くなる。 慌てて口を隠したが長岡の笑みは深まるばかり。 だけど、その顔がとても愛おしい。 今の子供っぽかったな… 恥ずかしい… 『良いに決まってんだろ。 それまで遥登のにおい付けといてくれよ』 ……着ちゃお いそいそとベットの上からそれを取ってくると直ぐ様腕を通した。 やっぱり抱きしめられているみたいで嬉しくなる。 頬の筋肉をゆるゆるにしてぽやぽやした顔を惜しみなく見せれば、先程の笑みに愛おしさが増した。

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