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第1062話
1つ、2つ、好きな事を考え口に出すと、心の緊張がほどけいく。
長岡はそれを狙っていたのだろうか。
優しい人。
大きな人だ。
握られた手を握り返し、ゆっくりと外デートを楽しむ。
「あ、腹減ってねぇか」
「俺は大丈夫ですけど、正宗さんは減りましたか?」
コンビニの看板から視線を隣に移したこいは、綺麗に整えられた眉を下げはにかむように笑った。
「遥登の顔見てると腹減んだよな」
「それは…喜んで良いんですか…?」
「良いと思うぞ。
で、だ。
ちょっと買ってくるから、ここにいてくれ」
コンビニを背中にした長岡に頷けば、水溜まりやシャーベット状になった雪を避けつつ入店しに行った。
ぬくもりの残る手は、まだあたたい。
優しさが伝わってくる。
雪の当たらない屋根の下でタンブラーを見詰めていると長岡はすぐに帰ってきた。
決して都会ではないこの地で、こんな時間にコンビニを利用する人は少ない。
おおよそ、店内の客は長岡のみだったのだろう。
駐車場には、深夜バイトの人の物であろう自動車と駐車場の雪を掻く除雪車が隅にあるだけだ。
「お待たせ。
行こうぜ」
袋を断ったのかシールを貼られたケースを手に駐車場へのデートが再開される。
隣に並ぶとトンッと手の甲がぶつかった。
「口開けな」
「え」
「冷えるぞ」
「あ、いただきます」
目の前に差し出された唐揚げを口で受け取ると、悪戯っぽく笑う。
口で受け取ったそれは、長時間温められていたせいで少し堅かった。
だが、美味しい。
「間接キース」
「してませんよ…」
「気分位は良いだろ。
だから、間接キス」
あたたかな恋人のお陰で胸の奥が随分とかるくなった
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