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第1063話

後部座席に並んで座ると、長岡はまた指を掴んできた。 いつもは運転席に座るのに。 そんなに心配させてしまって申し訳ない。 だけど、同じだけ嬉しい。 「ほんと、あったけぇ」 あったかいのは自分の方だ。 隠した筈の気持ちにそっと寄り添ってくれる。 そして、あたためてくれた。 もう、本当の顔で笑えている。 長岡が、長岡で良かった。 好きになったのが長岡で本当に良かった。 「正宗さん…」 「ん?」 「ありがとうございます」 「コーヒー、そんなに美味いか。 また持ってくるな」 コーヒーの事だと思われてるのか でも、コーヒーも嬉しいし ま、良いか 「あ、からあげの方か?」 「どっちもです。 楽しみにしてます」 手を握り返し、約束だと小指を結ぶように手を揺らした。 約束をしても延期を強要されてしまう今だとしても、それでも、約束が出来る事が嬉しい。 守ろうとしてくれるのが嬉しい。 ふふっと笑うその顔は漸くいつものやわらかいものになっていた。

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