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第1066話

雪のない所を歩いているつもりだが、なんだか靴の中がひんやりする。 だけど、それよりも気になるのは、 「どうした」 先程からチラチラと自分を見てはマフラーで顔を隠す様に、ふにゃふにゃ笑っている恋人。 「あ…格好良いなって思いまして。 雪も似合います」 「遥登も雪が似合うな」 「すぐに鼻とか赤くなるの恥ずかしいですけど…」 寒くて鼻が赤くなるというが、今はマスクが必須なので一見分からない。 とは言え、眉間の間やマスクから覗く頬骨の辺りも赤くなっているのは分かる。 「寒いか?」 「平気です。 正宗さんがいてくれますから」 久し振りに繋いだ手を軽く揺らし遠回りをする。 あと少し、もう少し。 やっとふにゃふにゃ笑う様になったのに、自宅に帰さなくてはいけないなんてな。 だが、本当に冷えてきた。 太陽光の光もなく、ただ雪が積もるだけの夜。 風邪でもひかせたら大変だ。 風邪なのか感染症なのか分からずご家族にも負担になってしまう。 それに、本人も心身共にしんどいだろう。 「んな可愛い事言って」 「正宗さんの感性を否定はしませんけど、可愛くはないですよ」 「んじゃ、格好良いし可愛い」 「へへっ、それ、あんまり変わってませんよ」 「嬉しい?」 「好きな人に誉められてるんですから嬉しいです」 そうか。 良かった。 「好きって言われんのとどっちが良い」 「あ…それは、好きの方が……嬉しいです」 恥ずかしそうにはにかむ恋人の手を引き、1歩近付ける。 よろけた三条は、長岡の肩とぶつかった。 その時、近くなった耳に言葉を贈る。 「愛してる」 「…っ!!」 自由な方の手で耳を隠し、吃驚した時の猫みたいな目をする。 蓬より柏に似ていて、やっぱり可愛い。 「このタイミングは狡いですよ…」 「ほんのと事だろ。 それに、もう寒くて赤いの分かんねぇな」

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