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第1071話

終わった 何時だ… 定時から1時間を過ぎた頃、漸くキリの良いところまで仕事が終わった。 休校分の学習内容を短くなった授業時間で補うには些か─本音を言えば全然─足りない。 特に3学年にとっては不安で仕方ないだろう。 では、足りない分をどうするかと言えば家庭学習でなんとか補って貰うしかなく、目下に迫った冬期休業中の課題用にプリント製作をしていた。 基本と応用。 そして、繰り返し覚えてもらえる用に+α。 はー、帰るか 今日は遥登と通話しながら飯だ 早く顔見てぇ 同室の職員、1人は職員室の自席でクラスの仕事を片付けている。 もう1人は15分ほど前に帰宅した。 長岡も帰ろうと腰を上げる。 こんな時に遅くまで学校に残っているのも良くない。 立ったまま卓上を片付け、鞄に荷物を埋め込む。 暖房を切り、そこを軽くアルコールを吹き掛け拭き掃除。 それだけでペーパーを捨ててしまうのは勿体ないのでドアの引手や、水道回りをサッと拭いていく。 こんな事で生徒の健康が守られるのならいくらだってする。 だが、現実はそう簡単な話ではない。 休校中、繁華街へ出掛ける生徒だっていたのは事実だ。 皆が皆、協力的だとは限らない。 それでも、しないよりはきっと良い。 ただの自己満足で良いんだ。 最後に拭き掃除をした手を洗い、ぐるりと準備室を見渡した。 窓の施錠。 資料や辞書、自前の本が詰まった事務棚の扉がしっかりしまっているか。 出したままではいけない物はないか。 そこまで確認して、長岡は漸く鞄を手にする。 何重にも張り付けた教師の顔のままパチッと電気を消した。 真っ暗な廊下を外の灯りといつもの感覚を頼りに階段へと向かう途中、考えるのはあの笑顔。

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