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第1072話

帰宅してすぐにシャワーを浴び、スーツから部屋着へと着替えた長岡はまだ襟足が湿ったままでビデオ通話を繋げた。 僅かなコールであっちとこっちが繋がる。 『おかえりなさい』 「ただいま。 付き合って貰って悪いな」 『いいえ。 嬉しいです』 いつもの様にふにゃっと笑う三条を見て、ホッと胸を撫で下ろす。 この顔を見ると部屋に帰ってきたんだと実感する。 学校でも散々見てたのにそう思うのは三条の位置付けがすっかり恋人になったからだろう。 家族と言っても良い。 溺愛している事を差し引いても、愛おしい存在だ。 『なに食べるんですか?』 「あー、カップ麺。 今日は腹減ってるからチャーハンも作る」 わんぱくだと笑う恋人。 見た目以上によく食う三条には負けるがな。 買い溜めのカップ麺を1つ選ぶと、三条は美味しそうだも言ちた。 晩飯を食べた後だろうにこの食欲は、身体の細さを知っているので安心材料になる。 浮いた肋や凹んだ腹を想像し、少しだけムラッとしてしまったのは秘密。 「あ、食ったら筋トレすっから」 『俺もします。 今年動けてないのが雪掻きしてると身体に出て…』 「体育もねぇしな。 また、あれするか。 しりとりしながら」 『普通のしりとりなら…』 「じゃ、やるか」 腕を巻くって手を洗う。 そうしてやっと、晩飯作りに取り掛かった。 まず、熱したフライパンに少し油を垂らすと生たまごを1つ割り入れる。 じわっとフライパンとの接触面が白くなり焼けていくそこに、何かを気にする事なく解凍した米を加えた。 そうしてフライパンの中で混ぜ合わせたって味は同じだ。 見た目もあまり変わらない。 調味料で適当に味付けをし、冷凍の葱をこれまた適当に入れしっかり混ぜ合わせたら終わり。 1人暮らしなんてこんな物だ。 炒めるのに使ったスプーンで食えば洗い物も少なくて済むしな。 『美味しそうです。 それにあっという間に出来ましたね』 「簡単なのが1番だ。 1人暮らしして10年も経てば手の抜き方も嫌でも覚える」 タイミングよくカップ麺用の湯も沸いて、晩飯だ。

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