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第1074話
『疲れた…』
「お疲れ」
『なんで今日は笑わせにきてたんですか。
腹筋が死ぬかと思いました』
「え、遥登好きそうだと思って」
始めこそ普通にしりとりをしていたのたが、途中から台詞を混ぜはじめたら三条はおかしそうに笑いだした。
その顔がとても愛おしくて胸の奥が、きゅっと弾んだ。
『むちゃくちゃ好きだ、は狡いです…』
「“は”で終らせねぇから仕方ねぇだろ。
遥登が好きだ、って言いたかったのに。
分かってて避けてたろ」
『だって…ですね……』
だって、恥ずかしいのだろう。
その顔見たさでしているのだから、それで良いのに。
「だって?」
『……腹筋どころじゃなくなります』
ぽわっと色っぽく頬を染めた恋人を見て、長岡は満足気に笑った。
そういうところが一々可愛いんだ。
三条らしさがとても愛らしい。
「でも、俺は大満足だぞ」
『今日は腹筋するって言ったんですから、するんです。
しりとりはまた今度…』
「今度してくれる?」
こくりと頭が揺れ、また笑う。
いや、ずっと笑っている。
楽しいからじゃない。
隣に三条がいるから。
物理的には離れていても、気持ちはいつも傍にいる。
三条といると素のままで笑ったり、心の底からまるで自分の事の様に心配したり、悔しさを分けあったり。
自分がこんなに沢山の感情を持っているのだとはじめて気付けた。
それだけ自分の世界が色を変えた。
画面の中で、恥ずかしそうにチラチラと此方を伺ってくる恋人によって。
「腕立てもするか?」
『しりとりながらですか…?』
「次こそ“は”で終わる言葉言わせてみせる」
『へへっ。
それ、目的が変わってますよ』
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