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第1076話
嬉しそうな長岡は大好きを何度も咀嚼している。
咀嚼というより反芻の方が合っていそう。
何度も何度も噛み締め、愛おしそうな顔をしてくれる。
それが、ただただ嬉しい。
噛む度に色が変われば良いのに。
温度が変われば良いのに。
もっと、笑顔になって欲しい。
言葉1つで大好きな人を笑顔に出来る。
しあわせに出来る。
会えない今、当たり前すぎて見えなかった事の大きさを再確認した。
『遥登。
俺も遥登の事大好きだ』
「へへ」
つられ頬の筋肉を緩めた三条はそのままの視線で長岡を見詰める。
綺麗な人はどの角度、どの方向から見ても飽きないし綺麗だ。
しかも、そんな綺麗で格好良い人は自分の恋人。
優越感にも似た気持ちが胸を弾ませる。
慈愛に満ちた目は出逢った頃と変わっていない。
ずっと、この目で見てくれていた。
はじめて会った時とは関係も世情もすべてが変わっているが、変わらないその愛情は今日も変わらず寄り添っていてくれる。
なんてしあわせだろう。
『録画しとけば良かった』
「いつでも言いますよ」
『じゃあ、今度ベッドの中で言ってくれ』
「え…それ、は……」
『いつでも言ってくれんだろ?』
やっぱり長岡の方が1枚上手だ。
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