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第1077話
「筋トレするっつったのに、遥登から言うんだもんな。
ずりぃよなぁ」
本当に、なんでこんな愛おしいんだろうな。
ただの生徒の1人の筈だった。
入学式にその目に惹かれ、秋の終わり酷い事をした。
独占欲をぶつけ手に入ればなんでも良いとさえ思っていた。
教職も世間体も、この子さえも。
それが、いつからこんなに大切なものになったんだろう。
全てが愛おしい。
そんな風に思える様に、この子が変えてくれた。
『俺だってたまには…言います…』
「ま、口にしなくても分かるけどな」
『え…。
そんなに分かりやすいですか?』
「基本的に、俺の事すっげぇ好きって顔で見てくるだろ。
そん時の顔、マジでムラムラする。
あと、手ぇ握ると好き好きって顔するだろ。
それから美味いもん食うと一緒に食いてぇって顔で見てくるだろ。
他にも」
『充分、分かりましたからっ』
「口にしてくれりゃ勿論嬉しいけど、ちゃんと分かってるから。
犬の尻尾みてぇに感情モロな顔すんだろ」
嬉しい時は嬉しい顔で笑い、悲しい時は悲しい顔で笑っている。
きゅっと上がった口端が本音を隠したって見てりゃ解る。
いつも言う分かりやすいは、揶揄ではない。
『正宗さんだって、キスの時とか……肉食動物みたいな顔します』
「それは、やべぇな」
『でも………嫌じゃ、ないです…』
手で口元を隠しても、肩が揺れてしまう。
『また笑って…』
だって、なぁ。
「しあわせだなって思ってるだけだから気にすんな」
『それなら…良いですけど…』
同じだけ……いや、それ以上にしあわせにしてやるから。
たま画面から逸れた視線に三条は気が付いた。
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