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第1083話

湯船に浸かり、濡れた髪を後ろに撫で付けるとポタポタと雫が湯船に溶けていく。 指がふやけていても気にならない。 かれこれ十数分は湯に浸かっているが話し相手がいるだけでいくらでも浸かっていられるようだ。 本当なら脚の間に閉じ込め悪戯もしたいが、そちらはもう少し我慢。 「さいこー…」 『逆上せないでくださいね』 「んー…。 もう少し浸かっててぇし、ぬるくするか」 少し水を混ぜ幾分かぬるくした。 それでも心配そうな顔が自分を見詰める。 恋人は自分に滅法甘い。 酷い事をしても、弱味に漬け込んでも許してしまう。 そんな子に愛され満たされているなんて4年前は想像も出来なかった。 それが今は、目の前でこの顔。 随分と懐いてくれたもんだ。 「なぁ、遥登。 寝る時もこのままで良いか」 『あ、はいっ』 三条は、顔をぱっとと明るくし尻尾をぶんっぶんっと振りだした。 なんだか通話を切ってしまうのが名残り惜しく言っただけなのだが、思ってた以上の反応だ。 やっぱり遠慮しているのだろう。 寂しかったら連絡を欲しいのは長岡も同じだと言うのに。 遠慮しいなのは今に知った事ではないのでそれは置いておいて、社会人の自分を気遣ってくれているのだろう。 人の事ばかり気にしなくても良いのに。 「明日も休みだし、夜更ししても良いなぁ。 ゲームするか? 本読むか?」 『正宗さんとなら何してても楽しいですっ』 俺もそう思っている事を、いつか気付いくれたら良い。

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