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第1085話

濡れた髪を後ろに撫で付け様子は自分だけが1人占めするには様になり過ぎている。 こめかみから頬、顎のラインを伝う水すら長岡を引き立てる装飾品。 こんな広告があったら女の子達が喜びそうだ。 中身は本の虫。 サディスト。 なんて言わなければ分からない。 だけど、俺の最愛の人だ。 誰にもあげない。 やっぱり、正宗さんって風呂好きだよな それにしても、今日は長風呂だな 湯だり過ぎて逆上せないかな 「さいこー…」 『逆上せないでくださいね』 「んー…。 もう少し浸かっててぇし、ぬるくするか」 足し水をしてぬるくしたが、心配になる理由がある。 通話をしながらなら逆上せても万が一の事があっても対応が出来る。 救急車だって呼べるし説明も出来る。 だが、入浴中に同性と通話をしているなんて怪しまれたら長岡に不利益が生じるかもしれない。 公務員はすぐに標的にされる。 だから、心配だ。 なにも悪い事をしてない恋人が責められでもしたら、同性と付き合っている況してや元生徒とと教職を追われでもしたら。 三条はそれを恐れている。 「なぁ、遥登。 寝る時もこのままで良いか」 『あ、はいっ』 三条は、顔をぱっとと明るくし尻尾をぶんっぶんっと振りだした。 現金だと笑ってくれても構わない。 だって、嬉しい。 心配なのは勿論あるが、それを差し引いても嬉しい。 嬉しいに決まってる。 隣で過ごせなくて寂しい。 悔しい。 だけど、それを埋めようとしてくれる気持ちが窶れそうな弱った気持ちを元気にしてくれる。 「明日も休みだし、夜更ししても良いなぁ。 ゲームするか? 本読むか?」 『正宗さんとなら何してても楽しいですっ』 ふへっと笑うと、長岡はとても愛おしそうな顔をした。 俺はこの顔が大好きだ。

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