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第1086話

ゲームをしていた三条が船を漕ぎはじめた。 時間は日付を変えてから2時間が経っている。 「眠いな」 『ん…そんな、ことは…』 瞬きは次第にゆっくりになり、そうかと思えばいつしか閉じたままになる。 ふと目を開けてもとろんてしていて、あぁ、いや、声もとろんとしているな。 これで眠くないって… 子供かよ 流石にそれは無理があると思うが。 珍しい姿に画面を見詰める。 いつも以上にとろとろした三条は、ふにゃ…ふにゃ…と笑いまた目を閉じた。 今、この子が目の前にいたら理性をフル回転させているだろう。 『ここ……ここを、くりあしたら…』 「ここクリアしたらふとんな」 『ね……、むくない、です』 「はいはい。 横になるだけだ。 俺が横になんだから遥登もだろ」 意味の分からない屁理屈を並べても、理解力より眠気が勝つ三条はうんと頷く。 まるでいつかの様に強情で子供みたいだ。 これはこれでとても可愛らしいので、もう少し見ていたのは長岡も同じ。 だが、眠いのならきちんとふとんで寝て欲しい。 そうでなくとも、冷えるというのに。 風邪でもひいたらどうするんだ。 眠くて動かない三条の化身をそのまま、長岡はコースをクリアさせる。 「はい、クリア」 『ん…』 「ほら、ゲーム置いて。 壊すなよ。 そうだ。 そしたらふとんな。 電気も。 よし、良い子だな。 ん、肩まで潜って」 どんなに眠くても繋げたカメラだけは近くにあるのを確認する姿がいじらしい。 もぞもぞと寝心地の良い場所を見付け深くベッドに沈む。 三条のその姿はとても可愛らしく、それを腕の中でされるとたまらない。 「俺も横になったから」 『ほ……ん…と』 もう眠いとしか思えないのだが、懸命に言葉を紡いでくれる。 本当だと返すが返答はない。 「遥登、おやすみ」 『……お……おき、…て……』 「ギリギリな。 ほら、俺の夢みろ」 もう寝息しか聴こえてこない。

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