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第1089話
次男と話しているとボトムスを引っ張られた。
小さな頭が此方を見上げて、そわそわとしている。
目線を同じにする為にしゃがんで、きゅっと上がった口端を更に上げた。
「どうした?」
「ぼーる」
「ボールで遊びたい?」
「んー…」
ボールも魅力的だが、車の玩具で遊ぶのもやりたいらしい。
どっちにしようか服を握って考えている。
可愛い姿にふにゃっと笑顔を溢す。
「飲み物のおかわりしたいから、どっちで遊ぶかちょっと悩んでで。
俺もなに飲もうか迷ってんだよ」
「ちゃーちゃ」
「お茶か。
お茶にしようか」
「綾登はおかわり大丈夫か?
母さんにも大丈夫か聴いてこい」
次男の声に小さな足音がととっとソファの方へと向かった。
可愛らしい声と母親の声が楽しそうに会話し、それを背後に聞きながらお茶の用意を整えていく。
「みっちゃ、ないない」
急に二文語を喋って驚いた。
言葉って、こんなにするっと口から出るものなのか。
兄姉がいると要望を悟って貰い言葉を話すのが遅くなるだの、反対に話してるのを覚え言葉を話すのが早いだの聞くが、そんな物は後付けだろうと思っていた。
だが、実際二文語を話した弟にたいして思うのはそんな後付けより、天才なのでは…?という親バカ思考だった。
「喋った」
「みーちゃん、ないないか」
「ん」
そっとスマホのカメラを起動させ、この場にいない父にもこの気持ちを共有して欲しいのだが、その日二文語は話さなかった。
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