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第1092話
「良い子な遥登に、サンタからのプレゼント。
んな寒そうな格好して…って言いたいところだけど、今日は丁度良かった」
ゆっくりと身体が離れた。
すぐに手をひかれ、境内の軒先に避難する。
さっきから頭に当たる霰が少し痛かったので名残惜しい気持ちもあるが素直に付いて行く。
肩や頭にのった雪を払われ、まるで子供みたいだ。
だけど、長岡の慈愛に満ちた目に何かを口にする事はしない。
「ありがとうございます」
「ん。
どういたしまして。
遥登、メリークリスマス」
腕に引っ掛かってた紙袋から綺麗に包装されたプレゼントを手渡され三条は、あ…!と何かを思い出した顔を見せた。
「部屋…」
「今日は俺が連絡なしに押し掛けたんだから良いんだよ。
どうせ、またボランティアであっち来るだろ。
その時まで楽しみに待ってる」
吉田のボランティア先に勉強を教えに行っている三条は帰宅前にほんの僅かな時間、恋人の部屋を訪れる。
此方の感染者数が増えそれも控えていた。
だけど、本音は僅かな時間でも十分だから会いたかった。
大切だから会えないなんて残酷だ。
ほどいたリボンを腕に巻かれてもされるがまま。
遥登がプレゼントでも良いぞなんて悪戯っぽく言う。
隣に奉られている神様が聞いたらなんて顔をするだろ。
でも、自分達を否定する事は神様だって出来やしない。
大切なのは、恋人と自分の気持ち。
他者は関係ない。
暖かそうなそれが首元に巻かれると、優しいぬくもりが身体中に広がった。
「マフラー…」
「こんな時だし頻繁に洗濯してぇだろ。
洗濯ん時の替えにな」
「こっちがメインですよ」
いつか贈られた言葉を返すと、大きな手が頭を撫でた。
親が子供の頭を撫でるように優しく慈愛に満ち、だけどそれ以上の愛情を伝える手が寂しかった心をあたためていく。
漸く屋根を叩く霰は止み、暗闇と静寂が辺りを支配する。
だが、それとは真逆に2人は嬉しそうな顔をしていた。
「あったかいです
手触りも気持ちくて、首回りが気持ち良いです」
「うん。
似合ってる。
遥登、なんでも似合うな」
「サンタさんのセンスが良いんですよ。
俺のサンタですから」
マスクは決して外さない。
キスも出来ない。
それでも、顔を見る事が出来るだけでこんなに安心する。
安堵する。
長岡の隣は、生きていると実感出来る。
「メリークリスマス、遥登」
「メリークリスマスです」
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