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第1094話

しっかりと手を握り返して、綺麗な目を真っ直ぐに見詰める。 この目に興味を持ったのが最初だった。 それから随分と一緒に時間を過ごしてきたが、惹かれた目は今日も綺麗だ。 その目に映る自分は泣いていてマスクが濡れたりと色々汚いが、それでも滲む愛情がありのままの自分を包んでくれている。 「俺、正宗さんと居るとしあわせです。 すごく、すごくしあわせです。 だから、正宗さんも同じだけしあわせにしたいです。 絶対にします。 世界で1番しあわせにします」 「もうしあわせだけどな。 でも、よろしくお願いします」 平均身長を優に越した自分を包み込んでくれる更に大きな人。 良いにおいに包まれ、そのまま暫くずぐずぐと泣いていた。 その間ずっと背中を擦っていてくれて、それにただただ安心した。 長岡が隣にいてくれるだけで無敵になれる。 そんな事を本気で思う。 「だけどな」 「?」 「世界で1番しあわせになんのは遥登なんだよ。 俺がすんの」 「子供みたいです」 長岡は綺麗に整えられた眉を八の字にしてふと笑い、マスクを濡らす涙をぐいっと拭ってくれた。 「こんな泣きじゃくってる方が子供だろ」 「嬉しくても泣けるんですよ…」 「生意気になって」 今度は嬉しそうな顔で、また頬の涙を拭ってくれる。 だって成長期だから。 出逢ってから何年が経ったと思ってるんですか。 そう言えば、やっぱり生意気になったなと笑われた。

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