1103 / 1502
第1103話
「綾登、おやすみ」
「おやすみ」
「ばばーい!」
沢山遊んでもまだ元気な三男は父親に連れられ寝室へ。
最後に元気な挨拶を残していった。
小さな大怪獣がいないだけで、リビングはガランとする。
「それにしても、クリスマスプレゼントすげぇな。
父さんも母さんも、玩具とか本とかは割りと買ってくれるよな」
「子供の時しかしてやれないからだろ。
それに、本は2人も好きだしなぁ」
「ふぅん?」
フォークでケーキを崩しながら、どうでも良い様な返事をした。
こんな時なら尚更だ。
そう思ったのを三条は飲み込んだ。
わざわざ明るくない話を振らなくても良いだろう。
三条は優登を一瞥すると席を立つ。
どうせなら楽しい話をしたい。
笑った顔の方が似合うから。
見ていて嬉しいから。
「じゃ、俺からもクリスマスプレゼント」
「え」
冷蔵庫の奥からそれを持ってくると不思議そうな顔をした。
ラッピングもされておらず段ボールのまま。
それに関しては申し訳ないが、本当は段ボールも剥ごうと思っていた。
ぽんっと手にのせると、案外ずっしりしているのにまた不思議そうな顔をする。
「なに……カルピス特選バター!
うわっ、あがるっ。
こんなに良いのっ」
「消耗品でごめんな。
でも、中々買えないだろ」
「兄ちゃん、大人じゃん!
これは、ガチで嬉しい。
なに作ろう。
なに食べたい?」
「クロワッサン」
「えげつねぇ」
嬉しさを隠し切れない笑みで、中からバターの塊を取り出し喜んでいる。
バターでここまで喜んでくれるなんて。
「はーっ、嬉しい。
使ってみたかったんだ」
「俺も食ってみたかった」
「冬休みに作るから楽しみにしててっ」
この顔の方がずっと似合っている。
ともだちにシェアしよう!

