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第1098話

冷えきった身体をあたためる為に2回目の入浴を終えた三条は、ホカホカの身体のままベッドに寝転んだ。 入浴時はこわくて外していた指輪を嵌め直した指を見詰める。 蛍光灯の光の下、夢みたいに輝くそれは夢心地を夢じゃないと言ってくれる。 そういう意味の指輪、か 何度咀嚼しても、心がきゅぅっとする。 嬉しくてたまらない。 長岡の人生と自分のそれを交換した。 つまり、長岡の人生は自分の人生だ。 ずっと一緒にいる約束。 こわくもあるがそのこわささえ自分が丸ごと貰った。 俺のもの。 寝る時、ベッドの隙間に落としたら嫌だな… ネックレスにしとこうかな… でも、指も嬉しいし外したくない…… 指輪と共にネックレスチェーンを貰い、普段は首から下げることにした。 『これなら、田上達にバレねぇだろ。 それに、首輪っぽくて良いし。 ま、見せびらかしてくれても構わねぇけど』 同じ店舗で買ったらしいそれが手渡され、慌てるばかりだった。 『そんなにいくつもいただけません…っ』 『いらねぇ? 迷惑か?』 『それは……』 長岡の気持ちを無下にする事は出来ず、言葉に詰まる。 プレゼントを選んでくれた長岡の気持ちも、今目の前で贈ってくれている長岡の気持ちも、俺のものだ。 俺だけのだ。 余す事なく。 『ほら、丁度服で隠れるぞ』 それに確認に首にチェーンを宛がわれた時の顔がとても嬉しそうで、それ以上首を振る事は出来なかった。 『ありがとうございます』 『俺の我が儘だっつったろ』 『嬉しいですから』 『そうか』 いつもだったらキスをしてくれていただろうその時、長岡の表情を見る事が出来るようになってこんなに愛おしそうな顔をしていたんだと知る事も出来た。 確かに、いつもを奪ったウイルスは憎い。 許すとか許さないとかそう言う話でもない。 だけど、大切な人からこんなにも愛されているのを改めて知る事が出来たのもまた事実。 深い愛情が自分を守ってくれている。 複雑な思いだが、だけど目の前にいる恋人の愛情はなにも変わっていない。 『ありがとうございます』 『どういたしまして』

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