1099 / 1502

第1099話

緩む口端をそのままに、指輪を眺めていると帰宅した長岡が映った。 コートのまま、 最初にカメラの前に来てくれる。 三条は直ぐ様起き上がると嬉しそうに尻尾を揺らしだした。 「おかえりなさい」 『ただいま。 風呂済ませたみたいだな。 俺もシャワー済ませてくるから、今度こそ寝るぞ』 「はい。 待ってます。 今度こそ一緒に寝ます」 『初夜だし?』 「え…、そういう意味じゃ…っ」 『違げぇの?』 くすくすと楽しそうに笑いながらコートを脱ぐ姿がえっちぃ。 そんなに色気を振り撒いて、これ以上どうするつもりなんだろう。 これ以上好きになったら、いっそ食べてしまいたい。 長岡が自分の血肉になり身体になれば、それこそ一生一緒だ。 『すぐ戻ってくるから待ってろ』 「あったまってきてください。 待たせてしまったので…心配です……」 『分かったよ。 あ、でも、眠かったら寝てて良いからな』 最後に首からマフラーを引き抜く様まで格好良い。 皺にならないようコートやマフラーをハンガーに引っ掛け浴室へと消えていった。 変な癖だとは思うが、顔の良い人の家庭的な1面を見ると興奮してしまう。 人間なんだなと。 まったくもって失礼な話だが。 それから長岡が浴室から戻ってきたのはいつもなら就寝している時間だったが、今日は終業式で殆どの時間を準備室で過ごせるから大丈夫だと言われた。 身体を動かさない方が眠くなるんじゃ…と思ったが、学校はこまめに換気をしている。 寒さで眠気も覚めるかと妙に納得してしまう。 『遥登、おやすみ』 「おやすみなさい」 寝てしまうのが勿体ない程ふわふわした気持ちを抱き締めて目を閉じた。

ともだちにシェアしよう!