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第1108話
朝飯を食べ終えた三条はベッドに背中を預けスマホを見ている。
手持無沙汰……というよりも、そこにあるのを確認するように胸元に触れながら。
そして、ふと視線を落とす。
ネックレスチェーンに通した指輪を弄っていて気が付いた。
あ、刻印…
M to H
そして、緑色の石が内側に埋め込まれている。
滑らかな曲線はシンプルだがきちんとした物だと分かる丁寧な作りの物で、細い自分の手にもすっきりと馴染む。
なんだか指まで綺麗になったように見えるからすごい。
アクセサリーは今まで付ける機会がなかったが、とても心が弾む物なんだと知った。
た、かそ……
冗談ではなく、本当に3ヶ月分なんだろうな
高過ぎてこわい…
とはいえ、指に嵌めていない時は首から外したくないのも又事実。
自分のものだ。
世界で1番大切な人から貰った、触れる事の出来るしあわせ。
手の中で体温と馴染むソレはどの角度から見ても綺麗だ。
どんな顔で選んだんだろ
どんな顔で買って、くれ……あ、もしかして、今まで視線が他にいってたのって指輪見てたのか…?
よく視線が他にいくとは思っていたが、もしかして本棚に置いておいたんじゃ。
長岡は大切な物をあの本棚の一角によく置いている。
そう考えると合点がいく。
あの目は、自分に向けられていたもの…。
…っ!
お返しを選んでいたスマホを置いて、本に視線を落としている恋人を呼ぶ。
「正宗さんっ」
愛しい人の深い愛情がこんなにも尊い。
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